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御所沼エッセイ No8 中村良夫

 

春草席

しばらく、筆不精でごぶさたしました。

旧年11月25日にひらかれた「公園づくりフェス2019」はまことに盛況で、あらためて公園につどう市民の元気にうたれました。菅パークマスターさんはじめ皆さまがまとめた冊子「古河公方公園づくりフェスティバル」もみごとです。

とくに、子供のころ遊んだ記憶をもつ若いお母さんたちが、今年はじめたコロリンの元気には、コロリと参りました。

わたしは、ふつう円卓会議の出席は遠慮し、春草席にねそべってうたた寝することを楽しみにしています。うつらうつらするうちにいろいろなもの音が聞こえてきます。  

 細い遣水のせせらぎ、小鳥のさえずり、湖面に跳ねる魚の水音、草むらの虫の声、森をぬける風の声、かすかな葉ずれ、遠い人語、草むらをかける何かの音、飛行機、みずとりの羽音、・・・・・小さな音の波紋の重なりに耳をすませば時間の過ぎるのもわすれます。

 いままで気づかなかった・・・この沼辺をめぐる音の豊かさ・・・そして、暮れかけた空を悠然とながれる雲。

 橋や建築や道も森の景観もいつしか意識の型枠からきえて、そのはるか後ろに、漠として広がっていた空や雲、草むらから生まれた風や鳥の声が私の体にしみ込んでいきます。

どこからか漢詩の一節が流れてきました。

 

「真の悟道は、ひっそりと空虚で、はるかにぼんやりとたずね難い」、と唄いだされ、やがて

・・・・・・・・・

蓋天蓋地 是無心・・・。

「空中ひとり唱(とな)う白雲の吟」

 

と繰り返しながら、プツリとやみました。

そう漱石の独吟です。

近くの仙人池から流れでたせせらぎがまた唱いだしました・・・。

今年もまたよろしく               令和2年元旦     中村良夫

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